Webサイトやアプリのユーザビリティを向上し、効果的に改善するには、
ユーザー視点で現状の問題点を抽出する「ヒューリスティック評価」という手法が有効です。
この記事では、ヒューリスティック評価の基本や、評価方法とその効果について詳しく解説します。
評価項目のチェックリストや無料のレポートサンプルも公開していますので、ぜひご活用ください!
目次
ヒューリスティック評価とは?
ヒューリスティック評価(分析)とは、Webサイトやアプリを、評価原則やガイドラインなどの
経験則(ヒューリスティックス)に基づいて評価し、問題点を明らかにする手法です。
この評価手法を通じて、直感的な操作性やデザインの使いやすさを見直すことで、コンバージョン率の向上や
ユーザーの離脱防止が図れるとともに、ユーザー満足度の向上も期待できます。
ヒューリスティック評価はユーザビリティに精通した専門家が担当し、ユーザーの視点で実際に操作を行いながら、ユーザー体験を妨げている要因を特定し、その課題に対する具体的な改善策を提案します。
ヒューリスティック評価の目的や効果
ヒューリスティック評価の目的
ヒューリスティック評価は、デザインや導線設計、コンテンツ構成など、さまざまな視点からWebサイトを専門家が診断・評価し、Webサイト上の課題を客観的に洗い出すことを目的としています。
制作やリニューアルに入る前に課題を可視化することで、注力すべき改善箇所を明確にし、戦略的な施策設計につなげることができます。
ヒューリスティック評価の効果
ヒューリスティック評価を実施することで、制作やリニューアルの前段階で課題と改善方針が整理されるため、進行中の方向性のブレや手戻りを防ぎ、効率的に成果につながるWeb改善が可能になります。
また、専門家による評価レポートは、社内関係者との合意形成や判断材料としても活用でき、
プロジェクト全体の意思決定をスムーズに進めることができます。
ヒューリスティック評価を行うメリット・デメリット
ヒューリスティック評価のメリット
ヒューリスティック評価には、コストや時間の面で効率的であり、実施の柔軟性が高いといった利点があります。
具体的なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
・豊富な事例をふまえた専門家からの意見を聞くことができる
・プロトタイプやデザインがあれば開発過程のどのタイミングからも実施できる
・低コストかつ迅速に分析〜改善まで実施ができる
-豊富な事例をふまえた専門家からの意見を聞くことができる
ユーザビリティに精通した専門家が評価するため、専門的な視点で問題や改善策を明らかにできます。
さらに、競合サイトや他の業界と比較した相対的な評価をしてもらうことも可能です。
専門家の意見を参考にすることで、具体的で実現可能な改善策を導き出すことができます。
-プロトタイプやデザインがあれば開発過程のどのタイミングからも実施できる
ヒューリスティック評価は、すでにリリースされているデザインのほか、プロトタイプやワイヤーフレーム、
作成途中のデザインなど、様々な段階のデザインに対し評価を行うことができます。
プロジェクトに入る前段階や開発段階でなど、プロジェクトのタイミング問わずに実施できるため、その後の修正コストを削減し、効率的に開発を進めることができます
-低コストかつ迅速に分析〜改善まで実施ができる
ヒューリスティック評価は、専門家が短期間で分析・評価を行うため、結果がすぐに得られ、分析〜改善までを迅速に進めることができます。そのため、大規模なリサーチやユーザビリティテストと比べてコストが抑えられます。
限られた時間や予算の中で進めるプロジェクトでも、より良いサービス制作に向けて対策することができます。
ヒューリスティック評価のデメリット
一方で、評価の質が専門家のスキルに依存することや、実際のユーザー視点が反映されにくいといったデメリットもあります。
具体的なデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
・専門家の経験やスキルによって、評価結果に差が生じる可能性がある
・評価者が実際のユーザーでないため、ユーザーの課題感が掬いきれない可能性がある
-専門家の経験やスキルによって、評価結果に差が生じる可能性がある
ヒューリスティック評価は、専門家の知識や経験に基づいて行われるため、評価する専門家のスキルレベルや分析視点によって結果が変わる可能性があります。
より効果的な結果を得るためには、実績がある経験豊富な専門家に依頼することを推奨します。
-評価者が実際のユーザーでないため、ユーザーの課題感を掬いきれない可能性がある
ヒューリスティック評価は、実際のユーザーから直接意見を聞く手法ではないため、ユーザーの本当のニーズや使い勝手に関する細かな課題感を完全には把握できないことがあります。
必要に応じてユーザビリティテストなどの分析手法と併用して実施することでより深いユーザー理解を得ることができるでしょう。
ヒューリスティック評価と、ユーザビリティテストやアクセス解析との違いは?
ユーザビリティテストやアクセス解析が「ユーザーの行動データ」や「検証環境」を必要とするのに対し、ヒューリスティック評価は、専門家の視点に基づいてサイトを診断するため、データ取得や検証環境の準備が不要で、課題の抽出から改善提案までを迅速に行える点が大きな違いです。

ヒューリスティック分評価の評価項目と具体例
弊社では、ニールセンの10のヒューリスティック評価原則やその他のデザインガイドラインをベースに、
独自の評価項目を設けて分析を行っています。
ここでは、その評価項目のチェックリストを一部をご紹介します。

上記チェックリストはあくまで分析を行う上で見るべきポイントの一部です。
実際に評価を行う際には、専門家の目線で以下も加味した評価を行います。
- Webサイトやアプリの目的・方向性
- お客様の課題感
- ターゲットユーザーの特性やニーズ
- 業界や競合の状況
- 現状のパフォーマンスデータ
チェックリストを活用しつつ、これらの要素を総合的に判断しながら評価を行うことで、より具体的で実践的な改善策を導き出せます。改善策はお客様のニーズに応じた適切な形でご提案します。
ヒューリスティック評価では、単にガイドラインに沿った評価を行うだけでなく、
実際のビジネスやユーザーのニーズに即した柔軟な分析を心がけることが重要です。

ヒューリスティック評価の進め方
ここからは、ヒューリスティック評価を効果的に行うための基本的な手順を紹介します。

Step1.課題と目的の整理
ヒューリスティック評価を行う前に、まず「なぜこの評価を行うのか」「どういう課題があるのか」といった課題と目的を明確にします。
ポイント:目的を定める
課題を洗い出し、評価の目的を設定することで、分析の焦点が定まります。焦点を明確にすることで、
課題抽出の精度が上がるほか、関係者への共有や行為形成もスムーズになり、プロジェクトの方向性もブレにくくなります。
Step2. 対象範囲を設定
評価対象の範囲を決めることで、評価の焦点を絞り込みます。 サイト全体のユーザビリティを確認するのか、
特定のページや機能にフォーカスして評価するのかなどを決定します。
ポイント:適切な対象範囲を定める
対象範囲が広すぎると評価に時間がかかってしまいます。一方、狭すぎると全体の問題を見逃してしまう可能性もあります。評価の目的を踏まえて適切な範囲を設定することで、効率よく評価を行い、具体的な改善策を導き出すことができます。
Step3. 評価項目を設定
前述した10のヒューリスティック原則などを参考にしながら評価項目を定めます。 評価項目はチェックリストのような形で資料化することが一般的です。
ポイント:評価項目で基準を明確にする
どのエリア・パーツに問題があるのかを具体的に洗い出します。競合サイトも同時に評価する場合は、同様の観点で比較を行い、客観的な視点での評価を心がけます。複数の評価者で分析を行うことで、より多角的な視点から問題を捉えることもできます。
Step4. 評価分析を実施
設定した評価項目に基づき、ヒューリスティック評価を実施します。 評価者はユーザーの視点に立ち、対象サービスを操作しながら問題点をリストアップしていきます。
ポイント:問題を具体的に洗い出す
どのエリア・パーツに問題があるのかを具体的に洗い出します。競合サイトも同時に評価する場合は、同様の観点で比較を行い、客観的な視点での評価を心がけます。複数の評価者で分析を行うことで、より多角的な視点から問題を捉えることもできます。
Step5.課題の優先順位付け
評価分析から抽出された課題を整理し、それぞれの重要度や影響度に基づいて優先順位をつけます。
ポイント:ユーザー目線に立った優先順位付け
ユーザーの操作を妨げる重大な問題は優先度を高く設定し、デザインの微調整のみ必要なものは優先度を低く設定します。優先順位を決めることで、リソースを効率的に使い、重要な施策から改善へ進めることができます。
Step6.改善策の検討と実行
洗い出した課題に対して、具体的な改善策を考えます。改善策が決まったらその策を実行します。改善後は効果を検証するために、定期的に再度評価を行い、改善点が正しく機能しているかを確認します。これを繰り返すことで、継続的にユーザビリティを向上させていきます。
ポイント:結果に基づいた改善策のアイデア出し
改善策は競合サイトや参考サイトを基にアイデアを出すことや、画面構成を作成して議論することなども有効です。また、評価者以外が見ても分かりやすいようにレポート化することも大切です。
以上が、ヒューリスティック評価の6つの基本手順とポイントになります。
ヒューリスティック評価とAIの可能性
ここでは、近年急速に活用が進むAIと、ヒューリスティック評価の関係性や可能性について考察します。
たとえば、ChatGPTやClaudeに代表される大規模言語モデル(LLM)は、大量のデータをもとに傾向を分析できるため、ヒューリスティック評価の一部工程を効率化するツールとして活用が期待されています。
LLMを活用することで、事前準備の段階で想定されるユーザビリティ上の課題や傾向を抽出したり、簡易的なレビューや評価の補助に活用したりすることが可能です。
ただしAIはあくまで支援的な役割にとどまり、専門家による経験や人間にしか持ち得ない判断力を完全に代替するものではありません。
ヒューリスティック評価は、ユーザーが感じる細かな違和感など、深い洞察が求められる場面も多いため、あくまでサポートツールとして活用し、専門家の評価と組み合わせて使用するのが最適です。
ヒューリスティック評価についてお気軽にご相談ください
ヒューリスティック評価は、専門家に依頼することで、課題・目的を深く理解した上での専門的な視点から具体的な改善策を提示してもらうことができます。
マイクロウェーブクリエイティブでは、1ページ単位でヒューリスティック評価が可能です。
また、競合分析や参考サイトとともに改善策をご提案しています。
関連サービス:ヒューリスティック評価サービス
ヒューリスティック評価やサイト診断をはじめとした、ユーザビリティ向上のためのサービスを複数ご提供していますので、
サイト・アプリに課題感をお持ちの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
貴社の課題を丁寧にヒアリングし、最適なプランをご提案いたします!


この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ UXグループ
成果を生むウェブサイトの基盤となる画面設計やUXデザインを担当するチームが、UI/UXや分析・戦略に関する情報を提供します。