本コラムでは、当社が豊富な実績と知見を持つ鉄道業界のWebサイト制作を中心に、公共交通機関に共通するWebサイトの課題や制作・リニューアルのポイント、適切な情報設計や運用方針について、成功事例を交えながらご紹介します。
鉄道会社をはじめ、バス・航空などの公共交通機関事業者の皆さまが、自社サイトのリニューアルや改善を検討されるうえでのヒントや判断材料としてご活用いただければ幸いです。
目次
鉄道・公共交通機関のWebサイトの特徴
鉄道・公共交通機関のWebサイトは、単なる企業情報サイトではなく、
利用者の移動を支える生活インフラの一部として機能しています。
平常時には、運行情報や時刻表、路線検索など、目的地までスムーズに移動するために必要な情報を、正確かつ分かりやすく届けることが欠かせません。
一方、災害や大規模な遅延が発生した際には、運転見合わせの状況に加え、代替ルートや振替輸送などの情報をいち早く届けることが、利用者の移動判断や安全確保につながります。
求められる役割
鉄道・公共交通機関のWebサイトには、日々の移動を支える「情報インフラ」としての役割に加え、企業の取り組みや地域の魅力を伝え、社会との信頼関係を築く「情報発信」の役割もあります。
近年では、訪日外国人の増加を背景に、多言語対応や誰にとっても分かりやすい案内導線の整備が、これまで以上に重要になっています。
また、安全への取り組みや地域との連携、サステナビリティに関する情報など、企業の姿勢や活動を分かりやすく発信することも、利用者や地域社会からの信頼を高めるうえで欠かせません。
このように、年齢や国籍を問わず多様な人々が、異なる目的や状況で利用する公共性の高いWebサイトでは、必要な情報へスムーズにたどり着けるよう、一般的なWebサイト以上にきめ細かな設計が必要です。
鉄道・公共交通機関のWebサイトでよくある課題
鉄道・公共交通機関のWebサイトでは、多くの企業が共通した課題を抱えています。
代表的なものとして、次のような課題が挙げられます。

情報量の増加による「探しにくさ」
時刻表、運賃、駅情報、ニュースリリース、採用情報、観光案内など、多様な情報が混在し、利用者が必要な情報へたどり着きにくくなるケースは少なくありません。
災害・遅延時における情報伝達の難しさ
災害や大規模な遅延の発生時に、緊急情報が通常のお知らせに埋もれ、本来最優先で届けるべき情報が視認しづらい構造では、利用者の混乱につながる可能性があります。
また、災害や遅延の発生に伴うアクセス集中によって、ページの表示速度低下やサイトダウンが発生し、「必要な情報が見られない」という深刻な状態に陥ることもあります。
スマートフォンでの視認性・操作性
移動中の利用が多いにもかかわらず、PCでの閲覧を前提に設計された時刻表やPDF中心の情報提供では、スマートフォンでの視認性や操作性が損なわれ、ユーザビリティの低下につながります。
多言語対応の部分最適化
訪日外国人の増加に伴い、多言語対応の重要性が高まる一方で、ページごとに翻訳品質や導線設計が異なり、必要な情報へたどり着きにくいケースがあります。
特に、運行情報や乗換案内など、移動に直結する情報が十分に翻訳されていない場合は、利用者の不安や混乱につながる可能性があります。
Webサイトの更新・運用体制
部署ごとの個別更新によってデザインや表記ルールが統一されず、サイト全体の一貫性が失われるケースもあります。
また、CMSや運用フローが古い場合には、更新作業が属人化し、緊急時の対応が遅れる原因にもなりかねません。
鉄道・公共交通機関のWebサイトでは、扱う情報やコンテンツの複雑さから、情報設計や運用に関する課題が生じやすい傾向にあります。
重視したい情報設計のポイント
鉄道・公共交通機関サイトでは「利用者が必要な情報へ迷わず、すぐにたどり着ける構造」の設計が極めて重要です。特に利用者は、移動中や急いでいる状況でサイトを利用するケースも多く、一般的なコーポレートサイト以上に、分かりやすくスムーズな情報導線が求められます。ここでは、効果的な情報設計のポイントを4つに分けてご紹介します。
① 利用者向け情報と企業情報の導線分離
時刻表や運行情報を探しているユーザーに対し、企業ニュースやIR情報が同列に表示されると、必要な情報を見つけにくくなり、ユーザー体験を損ないます。
そのため、トップページ段階で利用目的別に導線を整理する設計が重要です。
② 通常時と災害・遅延時の表示切替え
災害や大規模な遅延の発生時には、通常時とは異なるUIへ切り替える「緊急時モード」も有効です。
運行情報をページ上部の目立つ位置に表示し、代替ルートや振替輸送などの情報へすぐにアクセスできる構造にすることで、緊急時における利用者の判断負荷を軽減できます。
③ スマートフォンでの利用を前提とした設計
移動中の利用が多い鉄道・公共交通機関サイトでは、スマートフォンでの閲覧が前提となります。
片手での操作でも時刻表や運行情報、駅情報などへアクセスしやすいUIに加え、ページの表示速度への配慮や視認性の高いデザインが求められます。
④ 海外ユーザーの利便性を考慮した多言語対応
訪日外国人をはじめとする海外ユーザーを考慮した、多言語での情報提供やナビゲーション設計も重要です。
単に日本語のコンテンツを翻訳するだけでなく、言語を問わず必要な情報を見つけやすく、直感的に操作できる導線を設計することが、海外ユーザーの利便性向上につながります。
機能・システム設計で押さえるべきポイント
鉄道・公共交通機関サイトでは、見た目や使いやすさだけでなく、それを支えるシステム設計も重要です。
特に求められるのは、「落ちない」「遅れない」「ミスを防ぐ」という3つの視点です。

「落ちない」「遅れない」「ミスを防ぐ」設計とは?
「落ちない」設計
災害や事故の発生時にはアクセスが急増するため、アクセス集中への対策が不可欠です。
サイトダウンは利用者の混乱を招くだけでなく、企業への信頼低下にもつながる可能性があります。
「遅れない」設計
運行情報や遅延情報にはリアルタイム性が求められるため、API連携などを活用した自動更新も効果的です。
手動更新に依存すると、情報反映の遅れや更新ミスが発生しやすくなります。
「ミスを防ぐ」設計
複数の部署や担当者が安全かつ迅速に更新できるよう、CMSや運用フローの見直しも重要です。
承認フローや権限管理を整備することで、誤掲載や誤操作のリスクを抑えることができます。
その他、システム設計で押さえておきたいポイント
多言語対応を見据えた設計
訪日外国人の増加に伴い、英語・中国語などへの多言語対応の重要性が高まっています。
単なる翻訳だけでなく、運行情報や駅案内、災害情報などを適切に多言語展開できる設計が求められます。
検索性・導線設計の最適化
利用者は「駅を探したい」「路線を確認したい」「時刻表を見たい」など、明確な目的を持ってサイトを訪れるケースが多くあります。
そのため、駅検索・路線検索・時刻表検索などの精度向上は、利便性を大きく左右します。
セキュリティ対策
公共性の高いサイトでは、不正アクセスや改ざんの防止、脆弱性への対応、ログ監視など、継続的なセキュリティ対策が求められます。
非常時を見据えた情報設計
「緊急時専用テンプレート」や「災害時のデザイン切替」など、平常時と非常時を切り分けた設計も重要です。
こうした仕組みをあらかじめ整えておくことは、BCP(事業継続計画)の観点からも、非常時に情報提供を継続するためのWebインフラ整備につながります。
鉄道・公共交通機関においてDXが進むなか、Webサイトにも安定した情報提供基盤としての役割が求められています。利用者への情報提供を止めないためにも、平常時だけでなく非常時まで見据えた機能・システム設計が重要です。
鉄道・公共交通機関サイトのデザイン・UX設計トレンド
鉄道・公共交通機関サイトでは、多様な利用者が快適に利用できるデザインやUX設計も重要です。
ここでは、鉄道・公共交通機関サイトに共通するUI/UXの傾向についてご紹介します。
アクセシビリティへの対応
鉄道・公共交通機関サイトは幅広い利用者が利用するため、文字サイズやコントラストへの配慮、スクリーンリーダー対応など、誰もが利用しやすい設計が求められています。
多言語対応とピクトグラムの活用
訪日外国人や海外利用者の増加を背景に、多言語対応に加え、言語を問わず直感的に理解できるピクトグラムの活用が進んでいます。
アプリライクな操作性
通勤・通学など移動中の利用を想定し、高速なページ表示やスムーズな画面遷移など、スマートフォンでの利用を前提としたアプリのように快適な操作性を意識した設計も増えています。
状況に応じた情報提供
平常時は観光情報やイベント情報を、遅延発生時や緊急時には運行情報を最優先でトップに表示するなど、ユーザーの状況に応じてインターフェースが変化する設計が主流になっています。
鉄道・公共交通機関のWebサイトリニューアルの進め方
鉄道・公共交通機関のWebサイトリニューアルでは、まず現状のWebサイトが抱える課題や利用者ニーズを把握し、リニューアルの目的や方針を固めたうえで、情報設計や導線、デザイン、システム・CMSなどの要件を整理し、設計・制作・開発を進めていく流れが一般的です。
また、公開後も利用状況やユーザーの反応を確認しながら継続的に改善することで、利用者にとって使いやすく、企業にとっても運用しやすいWebサイトを維持していくことができます。
具体的には、以下のようなステップでリニューアルを進めていきます。
リニューアル前に整理したい3つの基本方針
鉄道・公共交通機関サイトのリニューアルでは、見た目やデザインの刷新だけを目的とするのではなく、
まずは誰に向けたサイトなのかを明確にし、基本方針を整理することが重要です。一例として、リニューアルに向けて整理すべき3つの基本方針をご紹介します。
1. Webサイトの役割を明確にする
鉄道・公共交通機関のWebサイトが担う役割は、例えば次のように整理できます。
・企業サイト:IR情報や事業ビジョン、サステナビリティ情報などを発信し、企業への理解や信頼を深める役割
・採用サイト:募集要項や社員紹介、働く環境、キャリア情報などを通じて、求職者に企業の魅力や働くイメージを伝え、応募意欲を高める役割
・利用者向けサイト:運行情報や時刻表、運賃、路線情報など、利用者が移動に必要な情報へスムーズにアクセスできる利便性を重視する役割
これらの異なる役割を一つのサイト内に明確な整理なく混在させると、情報の優先順位が曖昧になり、必要な情報を見つけにくいサイトになってしまいます。
そのため、「問い合わせ削減」「利用者満足度の向上」「採用応募の増加」「観光利用の促進」など、サイトの目的やKPIを明確にしたうえで、それぞれのユーザーにとって必要な情報の優先順位や導線を設計することが重要です。
2. 全面リニューアルか段階的な改修かを判断する
全面リニューアルには、デザインやシステム、サイト構造などを統一的に刷新しやすいメリットがある一方で、大規模なWebサイトでは、移行や運用にかかる負荷が大きくなる場合もあります。
そのため、サイト全体を一度に刷新するのではなく、課題や優先度の高い領域から段階的に改善していく方法が適しているケースも少なくありません。現状の課題やサイト規模、運用体制などを踏まえ、自社に適したリニューアル方法を検討することが重要です。
3. 情報設計と運用設計を同時に考える
リニューアルを考える際には、情報設計と運用設計を同時に考えることも重要です。
更新体制や承認フロー、緊急時の情報発信フローなどが整理されていなければ、どれだけ優れたデザインやシステムを構築しても、運用が滞るリスクがあります。
鉄道・公共交通機関サイトのリニューアルを成功させるためには、サイトの目的や役割を明確にしたうえで、情報設計だけでなく、リニューアル後の運用体制まで見据えて設計することが重要です。
リニューアルの成否は、実装に着手する前の準備段階で、こうした基本方針をどれだけ明確に整理できるかが重要なポイントとなります。
鉄道・公共交通機関サイトの改善事例
近年、多くの鉄道・公共交通機関では、利用者の利便性向上や情報発信の強化を目的に、Webサイトのリニューアルや改善が進められています。例として、次のような成功事例があります。

事業者種別 | 改善事例 |
|---|---|
大手鉄道会社 | トップページを利用目的別に整理し、運行情報・路線検索・観光情報への導線を再設計することで、利用者の利便性を向上 |
地方鉄道 | 観光情報への導線を強化し、沿線の魅力発信や利用促進につながるサイトへ改善 |
バス会社 | スマートフォンに最適化したUIへ改善することで、利用時のストレスを軽減し、停留所(バス停)検索や運賃検索の利用率が向上 |
一方で、情報整理が不十分なまま公開した結果、「以前より探しにくい」という評価につながる失敗事例も存在しています。
重要なのは、見た目を新しくするだけではなく、利用者がどのような状況でWebサイトを利用するのかを踏まえて情報を整理することです。
平常時はもちろん、災害や遅延などの緊急時における情報提供や、更新・運用のしやすさまで考慮しながら、Webサイト全体を設計することが重要です。
制作会社の選び方(鉄道・公共領域編)
こうした複雑な要件に対応するには、公共交通機関ならではのWebサイト運用やシステム要件を理解し、確かな実績と専門性を持つ制作会社を選ぶことが重要です。
鉄道・公共交通機関のWebサイト制作を依頼する際は、特に次の4つのポイントを確認しましょう。
POINT 01
鉄道業界・公共交通機関に関する知見・実績
運行情報や時刻表などの情報提供、多部門によるサイト運用、関連法規(アクセシビリティなど)への対応など、鉄道・公共交通機関ならではの要件を理解し、関連するWebサイトの制作実績があるか。
POINT 02
大規模サイト・CMSの構築・運用支援体制
数千〜数万ページ規模のサイト構築実績があり、複雑な権限管理や外部システム連携に対応できるCMSの技術力を備えているか。また、公開後の運用フェーズまで見据えたサポート体制が整っているか。
POINT 03
インフラ・セキュリティへの対応力
災害や大規模な遅延などによるアクセス集中にも耐えられるインフラ設計のノウハウや、高度なセキュリティ要件に対応できる技術力・実績があるか。
POINT 04
外部パートナーとの連携・プロジェクト推進力
運行情報システムや時刻表データベース、翻訳サービスなど、関連する外部システムやベンダーと連携し、円滑にプロジェクトを推進できる体制や経験があるか。
当社の鉄道・公共交通機関向けWebサイト制作実績・サービス

当社では、多様な業界で培ってきた豊富な実績と技術力を活かし、鉄道・公共交通機関のWebサイト制作も数多く手がけています。大規模サイトの構築やCMS導入、外部システムとの連携など、複雑な要件を伴うプロジェクトにも柔軟に対応可能です。
鉄道・公共交通機関におけるWebサイト制作実績の一部をご紹介します。
従来のサイトでは、情報の分散やモバイル対応、ページごとのデザインのばらつきなどの課題に対し、ユーザー視点で情報設計を見直し、利用者・投資家・採用候補者など、それぞれのステークホルダーが必要な情報へスムーズにたどり着ける導線を構築しました。また、京王グループの多様な事業を一貫したトーン&マナーで表現するとともに、高機能なCMSを導入することで、運用効率の向上とWebガバナンスの強化を支援。鉄道事業にとどまらないグループ全体の魅力を多角的に発信できるWebサイトへと刷新しました。
駅情報や運行状況など、利用者にとって重要な情報へのアクセスを見直し、UI・UXを改善。鉄道利用に必要な情報だけでなく、沿線の魅力を伝え、「住みたい」「出かけたい」と感じてもらうためのコンテンツも拡充しました。
また、直感的に操作できるCMSを導入し、各部門がタイムリーに情報を更新できる運用環境を構築。利用者の利便性向上と沿線ブランドの発信強化、Webサイトの運用効率化を図りました。
「選ばれる沿線」であり続けることを目指し、沿線利用者や居住検討者を主要なターゲットとしてWebサイトをリニューアル。鉄道の基本情報に加え、周辺施設やイベント、安心・安全への取り組みなど、沿線での暮らしや魅力を伝えるコンテンツを充実させました。
さらに、独自のレコメンド機能「Myえきタウン」の新設や、実際の駅サインと連動したカラー・アイコンを取り入れることで、直感的に情報を探せるUIを実現。カスタマイズ性の高いCMSの導入と運用ガイドラインの策定により、サイト品質の維持と運用効率化を両立しました。
まとめ
鉄道・公共交通機関のWebサイトは、日々の移動や安全を支える重要な「情報インフラ」です。特に災害や遅延などの緊急時には、正確かつ迅速な情報提供が、利用者の安心や企業への信頼にも直結します。
記事内でご紹介したように、今後の鉄道・公共交通DXでは、利用者視点と運用視点の両方を踏まえ、「必要な情報へすぐにたどり着ける構造」と、「落ちない」「遅れない」「ミスを防ぐ」ための設計が、これまで以上に求められます。
私たちは、鉄道・公共交通機関をはじめ、さまざまな業界の大規模サイトで培った豊富な実績とノウハウをもとに、基本方針の策定や戦略設計から、情報設計、UI/UX設計、サイト構築まで一貫して支援しています。
貴社の課題に合わせた最適なご提案と、デザイン性と使いやすさを両立した設計により、鉄道・公共交通機関を利用される多様な方々にとって、分かりやすく使いやすいWebサイトを実現します。リニューアルをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ ディレクショングループ
プロジェクトの進行管理や全体指揮を担当。業務やウェブプロジェクトに役立つ様々な情報を発信します。




