「うちのサイトは狙われるほど大きくないから大丈夫」
「制作会社に任せているから、セキュリティは万全なはず」
もしそのように考えているなら、一度立ち止まって確認してみる必要があるかもしれません。
現在のサイバー攻撃は、企業規模や知名度に関係なく、脆弱性のあるサイトを標的にしています。
ひとたびサイトが改ざんされたり、不正アクセスによって情報が漏えいしたりすれば、企業の信頼やブランド価値は一瞬にして損なわれかねません。
このコラムでは、そのようなリスクへの対策をお伝えするために、動的CMS・静的CMS・ヘッドレスCMSなど、さまざまなCMSの構築・運用に携わってきた経験をもとに、企業サイトの担当者が押さえておきたいセキュリティリスクと、すぐに実践できる対策について解説します。
目次
なぜ企業サイトは狙われるのか?CMS攻撃の実態
かつてのサイバー攻撃は、大企業や官公庁など特定の組織を狙い、高度な技術を用いて攻撃する「一点突破型」が主流でした。
しかし近年では、AIや自動化された攻撃ツールによってインターネット上のWebサイトを無差別にスキャンし、脆弱性のあるサイトを探し続ける「絨毯爆撃型」の攻撃が一般的になっています。そのため、攻撃者にとって企業の知名度や規模は必ずしも重要ではありません。
古いバージョンのCMSを利用している、セキュリティ設定に不備がある、プラグインの更新が行われていないといった脆弱性、つまり攻撃者にとって「侵入しやすい隙」があるかどうかが、ターゲット選定の基準となっています。
CMSが狙われる理由
特にCMSは世界中で広く利用されているため、攻撃者にとって効率の良い標的です。
ひとつの脆弱性を見つけるだけで、同じCMSやプラグインを利用している多数のサイトを攻撃対象にできるためです。
例えば、WordPressやMovable Typeなどで新たな脆弱性が発見された場合、同じ仕組みを利用している膨大な数のサイトに対して、自動的に攻撃を仕掛けることが可能になります。
そのため、「自社は大企業ではないから大丈夫」と考えるのではなく、「脆弱性が放置されていないか」という視点でサイトを管理することが重要です。
攻撃によって発生する被害
こうした攻撃による被害は、単なるサイト停止や改ざんだけではありません。
顧客情報や機密情報が気付かないうちに流出したり、不正なプログラムが埋め込まれて検索結果に警告が表示されたりすることで、企業の信頼やブランド価値を大きく損なう可能性があります。
また、自社サーバーが踏み台として悪用され、取引先や顧客へウイルスメールが送信されるなど、第三者への被害拡大につながるケースもあります。
代表的な被害例としては、以下のようなものがあります。
被害例 | 被害内容 |
|---|---|
顧客情報・機密情報の流出 | 顧客リストや機密情報が、気付かないうちに外部へ持ち出される。 |
検索順位や集客力の低下 | 不正なコードの埋め込みなどにより、検索結果に警告が表示され、アクセスや問い合わせの減少につながる。 |
取引先への被害拡大 | 自社サーバーが悪用され、取引先や顧客へウイルスメールが送信されることで、企業の信用低下や法的リスクにつながる。 |
このように、現在のサイバー攻撃は「有名企業だから狙われる」のではなく、「脆弱性があるから狙われる」時代へと変化しています。
では、実際にCMSにはどのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。
次章では、CMSの種類ごとに異なるリスクについて解説します。
便利なCMS、その裏に潜むリスクの正体
これまでのコラムでも紹介してきた通り、CMSにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる仕組みで作られています。そのため、サイバー攻撃につながる「隙」や、注意すべきポイントも異なります。
関連コラム:CMSに関するコラム記事一覧
ここでは、代表的なCMSの種類ごとに、どのような脆弱性やリスクがあるのかをご紹介します。
① WordPressなどの「動的CMS」
サイトにアクセスがあるたびに、サーバー内でCMSプログラムが動き、リクエストされたページを生成するのが「動的CMS」です。リクエストが実行されるたびに最新状態のページを出力することができるのが強みです。
データベースやプログラムなどの動的CMSの裏側が常にインターネット経由でアクセス可能な状態となるため、アップデートを怠ったり、信頼できないプラグインを導入したりすると、サイバー攻撃の対象になる可能性が高まります。
② Movable Typeなどの「静的CMS」
あらかじめCMSにより生成されたHTMLファイルを公開する「静的CMS」は、比較的セキュリティリスクを抑えやすいCMSです。CMSと公開されるHTMLファイルをサーバーごとに分離することで、公開サーバーにはCMSのプログラムが存在しないため、CMS本体を狙った攻撃を受けにくくなります。
管理画面側のセキュリティを疎かにすると、管理画面が乗っ取られ、不正なコンテンツやファイルが配信されるリスクがあります。
また、お問い合わせフォームやサイト内検索機能、会員限定ページなど、一部で動的な機能を利用しているケースも少なくありません。これらの機能は静的生成によるセキュリティ上のメリットを弱める要因になり得るため、プラグインを常に最新の状態に保つことが重要です。
③ microCMSなどの「ヘッドレスCMS」
ヘッドレスCMSは、表示画面(フロントエンド)と管理機能(バックエンド)が完全に切り離されています。これにより、従来型のCMSで多かった攻撃手法の多くを無効化し、攻撃リスクを抑えやすいという特徴があります。
APIキーやアクセス権限の管理を徹底しなければ、本来公開されるべきではないデータへ第三者がアクセスできてしまう可能性があります。 そのため、ヘッドレスCMSではサイト構築時の設計や権限管理を適切に行うことが重要です。
すぐに実践できる3つのCMSセキュリティ対策
ここからは、企業サイトの担当者が実践できる具体的なCMSセキュリティ対策についてご説明します。
セキュリティ対策と聞くと、「コストがかかる」「運用が複雑になる」といったイメージから、後回しにしてしまうケースもあるかと思います。しかし、セキュリティ対策は高度な技術や高額なシステムを導入することだけではありません。
むしろ、多くのセキュリティ事故は、アップデート漏れや権限管理の不備など、基本的な運用上の課題が原因で発生しています。まずは自社サイトの管理体制を見直し、日常的な運用の「穴」を埋めることが、セキュリティ強化の第一歩となります。
以下は、企業サイトの担当者がすぐに実践できる代表的なセキュリティ対策です。

① 2段階認証を導入する
どれだけ複雑なパスワードを管理画面などで設定していても、パスワードそのものが流出してしまえば不正ログインを防ぐことはできません。
そこで有効なのが「2段階認証」です。CMSへのログイン時に、認証アプリをインストールしたスマートフォンなどで追加認証を行うことで、第三者による不正ログインのリスクを大幅に低減できます。
確かに、ログイン時にひと手間増えるため多少の煩わしさを感じるかもしれません。しかし、一度アカウントが乗っ取られた場合の復旧コストや被害を考えれば、その数秒の手間は非常に効果の高い対策といえるでしょう。
② 不要なプラグインを削除する
CMSの脆弱性は、本体だけでなくプラグインから発見されるケースも少なくありません。
そのため、当社のエンジニアは、不要なプラグインがないかのチェックや機能の絞り込みを常に心がけています。機能が少ないと不便に感じるかもしれませんが、機能が少ないということは、そのまま「攻撃される余地が少ない」ということに言い換えられます。
年に一度でも構いませんので、現在導入しているプラグインを見直し、本当に必要なものだけを残す習慣をつけることをおすすめします。
③ 定期的にログイン履歴を確認する
セキュリティ事故で最も怖いのは、被害に気付くのが遅れることです。
そこで習慣にしたいのが、CMSのログイン履歴の確認です。見覚えのないIPアドレスからのアクセスはないか、深夜や休日に不自然なログインが発生していないかを定期的にチェックすることで、不正アクセスの兆候を早期に発見できる可能性があります。
CMSやセキュリティツールに任せきりにするのではなく、定期的に人の目で確認することも重要なセキュリティ対策のひとつです。
CMSを選ぶ際に確認したいセキュリティのポイント
ここまで読んで、「CMSのセキュリティリスクは分かったが、これからCMSを選ぶ場合は何を基準にすればよいのだろう」と感じた方もいるかもしれません。
以下では、CMSを選ぶ際に確認しておきたい5つのセキュリティポイントをお伝えします。
1. 二要素認証(2FA)が標準機能として備わっているか
二要素認証(2FA)は、アカウントの乗っ取りを防ぐための非常に有効な対策です。プラグインの追加が必要なのか、標準機能として提供されているのかを確認してください。
2. ログイン履歴や操作履歴を確認できるか
万が一セキュリティ事故が発生した際、原因を特定できないことが最も大きなリスクの一つです。ログイン履歴や記事の更新履歴など、「誰が・いつ・何をしたのか」を管理者が確認できる仕組みがあるかを確認しましょう。
3. アップデートの「手軽さ」と「継続性」
開発や保守が長期間停止しているCMSや、更新作業があまりに複雑で「怖くてアップデートできない」と現場が感じるシステムは避けるべきです。ボタン一つで更新できるか、あるいは、SaaSのように自動アップデートに対応しているかなど、継続的に最新状態を維持しやすい仕組みになっているかを確認しましょう。
なお、自社での対応が難しい場合は、開発・保守ベンダーへ定期的なアップデートを依頼できる体制を整えることも重要です。
4. 責任の境界線が明確な「マネージド(SaaS)環境」か
サーバーのOSやミドルウェアのアップデートのまで自社で管理するのか、それともサービス提供者が対応してくれるのかは重要な判断ポイントです。
セキュリティ運用に十分なリソースを確保できない場合は、microCMSなどのヘッドレスCMSや、クラウド版Movable TypeなどのCMSも有力な選択肢となります。
5. 権限管理を細かく設定できるか
「管理者権限しか存在しない」「誰でも全ての操作ができる」といったCMSは、運用上のリスクが高くなります。執筆者、編集者、承認者、管理者など、役割ごとに必要な権限だけを付与できる仕組みがあるかを確認しましょう。権限を必要最小限に抑える「最小権限の原則」は、セキュリティ対策の基本の一つです。
セキュリティ対策の先にあるものとは
これまで紹介した対策以外にも、CMSのセキュリティを高める方法は数多く存在します。
しかし、セキュリティ対策を「後ろ向きなコスト」や「制約」として捉える必要はありません。
当社が企業のCMS構築において「使いやすさ」や「運用のシンプルさ」を重視しているのは、それが結果として高いセキュリティにつながると考えているからです。
例えば、複雑すぎてマニュアルがなければ運用できないCMSは、担当者にとって大きな負担となり、結果として、ファイルのアップロードミスやパスワード管理の不備など、人為的なミスが発生しやすくなります。
つまり、サイト運用担当者の負荷そのものが、新たなセキュリティリスクになり得るのです。
一方で、担当者が直感的に操作でき、迷わず更新できるCMSは、情報の鮮度を保ちやすいだけでなく、異常な挙動や不正アクセスの兆候にも気付きやすくなります。
サイト運用担当者にとって使いやすい設計は、巡り巡って「サイトを守る設計」につながります。
安全なサイトは企業の信頼を支える
Webサイトは、企業の信頼性やブランドイメージを支える重要な基盤のひとつです。
万が一セキュリティ事故が発生した場合、失うのはデータだけではありません。これまで築いてきた顧客や取引先からの信頼、企業ブランドそのものにも大きな影響を与える可能性があります。
安全なサイトを維持し続けることは、企業としての誠実な姿勢を示すことでもあります。こうした積み重ねが企業への信頼を生み、最終的にはお問い合わせや商談といった成果につながっていくのではないでしょうか。
CMSのセキュリティ対策はぜひマイクロウェーブクリエイティブへ
Webサイトのセキュリティに100%の正解はありません。しかし、利用しているCMSの特性を理解し、自社の運用体制に合わせたルールを整備・継続することで、セキュリティリスクを大幅に低減することは可能です。
また、自社だけで判断するのではなく、CMSやセキュリティに詳しい専門家へ相談しながら対策を進めることも重要です。
当社では、現在ご利用中のCMSに関するご相談はもちろん、セキュリティ対策のみのご支援や診断、運用体制の見直しにも対応しております。
貴社のCMS環境や運用状況に合わせて、最適な対策をご提案いたしますので、現在のサイト運用に少しでも不安を感じている方や、「何から対策すればよいかわからない」という方は、ご相談ください!
この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ バックエンドグループ
CMS、Webアプリケーション、開発・プログラミングに関する情報などエンジニア目線で深く切り込んだ情報を発信します。




