サステナブルWebデザインとは?企業の導入事例と効果、実践的な具体策を紹介

2025年12月12日

サステナブルWebデザインとは?

デジタル技術の進化やオンラインサービスの利用拡大に伴い、Webサイトが消費するエネルギーやCO₂排出量は年々増加の一途を辿り、企業の“環境負荷の改善”に向けた取り組みも重要な経営課題となりつつあります。
このような背景から注目されているのが、環境配慮とユーザー体験の両立を目指す 「サステナブルWebデザイン」 です。

本コラムでは、サステナブルWebデザインの基本的な考え方や、企業が取り組むべき理由をわかりやすく整理するとともに、様々な領域のWebデザインを手がけてきた制作会社の視点から、具体的な実践方法や企業の導入事例も紹介します。自社のサイト改善や環境配慮型のデジタル戦略を検討している方にとって、役立つヒントとなる内容ですので、ぜひご活用いただければ幸いです。

サステナブルWebデザインとは?

サステナブルWebデザインとは、
地球環境への負荷を抑えながら、ユーザーの利便性と快適さを高めることを目指すデザインアプローチです。
具体的には、ウェブサイトの軽量化、再生可能エネルギーの利用、アクセシビリティの向上などを通じて、
環境にもユーザーにも配慮したWebサイトを実現することを目的としています。

従来のWebデザインでは、表示速度やビジュアルデザインが重視される傾向にありましたが、サステナブルWebデザインでは、これらに加えて Webサイトが消費するエネルギー量やデータ量を考慮し、それらが環境に与える影響や負荷まで視野に入れて設計することが特徴です。

💡2023年10月には、非営利団体の World Wide Web Consortium(W3C)によって
ウェブ・サステナビリティ・ガイドライン(WSGs)」 が公開されており、具体的な取り組みを検討する際の実践的な指針として活用できます。

サステナブルWebデザインが求められる理由

サステナブルWebデザインは、デジタル技術が環境に与える負荷の大きさや、
企業や社会におけるサステナビリティ意識の高まりによって、近年その重要性が増しています。

インターネットは非物質的な存在に見えますが、その裏側では膨大なエネルギーが消費されています。
AIの急速な発展により、データセンターの電力消費が年々増加しているからです。
さらに、世界中で約11億のWebサイトが公開され、数兆ページが日々閲覧されていることも、エネルギー消費を押し上げる大きな要因となっています。

また、Webサイトの表示やデータ送受信にはサーバー稼働が不可欠であることから、その電力消費が世界のCO₂排出量に与える影響は大きく、航空業界に匹敵する規模とも言われています。1ページあたりの排出量は微量でも、世界全体で見るとその総量は無視できないほど膨大になります。

こうした背景から、地球規模の課題解決に向けた「デジタル世界の環境負荷」を減らす取り組みとして、
サステナブルWebデザインは企業にも個人にも求められているのです。

サステナブルWebデザインがもたらす効果

サステナブルWebデザインは、環境配慮にとどまらず、企業のコスト最適化やUX(ユーザー体験)の向上、ブランド価値の強化といった多面的なメリットをもたらします。
また、エシカル(倫理的)なデザインの考え方とも深く関わるアプローチであり、企業活動全体の質を高める取り組みと言えます。
ここでは、その代表的な効果を整理してご紹介します。

サステナブルWebデザインがもたらす効果

🌿 環境への貢献と経済的な効率化

サイトを軽量化する(画像の最適化や効率的なコーディングなど)ことで、データ転送量とサーバーの電力消費を大幅に削減できます。
これらの効果は、CO₂排出量の削減につながるうえ、データセンターの冷却費用やネットワークの負荷が軽くなり、インフラコストの見直しにも直結します。

また、サイトが軽くなることで表示速度が向上し、ユーザーの離脱防止やコンバージョン率の向上、SEO改善など、ビジネス上の実利的なメリットも期待できます。
つまり、環境負荷の低減と同時に、企業にとっての経済的な効率化も実現できるため、環境面とビジネス面の双方でプラスに働く取り組みといえます。

🚀 ユーザー体験(UX)の向上

軽量で効率的なデザインは、ページの読み込み速度を大きく改善します。
回線速度が遅い地域や、表示速度に敏感なモバイル・スマホユーザーにとってはもちろん、
誰にとっても快適に利用できる閲覧体験につながります。
また、ユーザー行動を踏まえた適切な導線設計により、無駄なクリックやページ移動を抑えることができ、データ転送量の最適化とユーザビリティの両面で効果が期待できます。

✨ ブランドイメージと企業価値の向上

環境に配慮したWebサイトは、企業がサステナビリティ(ESG)に取り組んでいることを明確に伝えることができます。
こうした姿勢は、環境意識の高い消費者や投資家からの信頼獲得につながり、ブランドイメージや企業価値の向上にも寄与します。

サステナブルWebデザインの具体策

サステナブルWebデザインを実践する際は、
「データ転送量を減らす」
「クリーンなエネルギーを使用する」
という2つのアプローチが基本となります。ここでは、それぞれの取り組みを具体的に紹介します。

1. データ転送量を減らす

画像の最適化

  • 圧縮効率の高い WebP や AVIF を積極的に利用する
  • TinyPNG / Squoosh などのオンライン画像圧縮ツールを使用し、画質を保ちながらファイルサイズを削減する
  • レスポンシブイメージを実装し、SSやHTMLのsrcset属性を活用することで、不要に大きな画像を読み込ませるのを防ぐ

フォントの軽量化

  • ページの表示に必要な文字だけを抜き出すサブセット化を活用する
  • Google Fontsのtextパラメータの活用や、Font Awesomeのようなアイコンフォントも、「必要なアイコンだけを抜き出す」設定を利用する
  • 端末に標準で入っているシステムフォント(OSに組み込まれたフォント)を使用する

動画・アニメーションの扱いを適正化

  • 自動再生はデータ通信量が大きいため、必要な場合のみ適切に使用
  • 動画の長さは可能な限り短縮する
  • ファイル形式は MP4 / WebM など圧縮効率の高いものを選ぶ

UX(ユーザー体験)の改善

  • 情報設計を見直し、ユーザーの無駄なクリックや移動を減らす
  • 「なんとなく」入れている機能・プラグイン・不要な JavaScript がないか確認し、削除や簡素化を行う

2. クリーンなエネルギーを使用する

サーバーには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで稼働する、環境に配慮したホスティングサービス
「グリーンホスティング」を利用する方法が効果的です。

化石燃料由来の電力に頼らず、再生可能エネルギーを用いることで、カーボンフットプリント(CO₂排出量)を大幅に削減でき、より持続可能なインターネット運用につながります。

グリーンホスティングの例

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Google Cloud Platform(GCP)
  • Microsoft Azure
  • Cloudflare
  • Akamai

企業サイトのサステナブルWebデザイン導入事例

この章では、サステナブルWebデザインを取り入れた3社の公開事例を基に、各社の施策内容と成果を整理して紹介します。

--パシフィコ横浜--

トップページの最適化で、PV数20%削減・お問い合わせ数88.7%削減を実現

パシフィコ横浜は、WebサイトのリニューアルにサステナブルWebデザインを取り入れました。
トップページの画像を最適化し、スクロールを発生させないデザインを採用したことで、表示速度が大幅に改善。リソースの使用量も抑えられ、不要なアクセスが減った結果、PV数は20%減少しました。

また、ユーザーが目的の情報へスムーズに辿り着けるようになったことで、サポートへの問い合わせ件数も 88.7% 減少。UIデザインの改善とページ数の削減が、環境負荷の低減とユーザー体験の向上を両立させた代表的な好事例です。

--株式会社メンバーズ--

紙の年賀状 → サステナブルなWeb挨拶へ。CO₂排出量を約7割削減

同社は紙の年賀状を廃止し、サステナブルWebデザインを活用した年末挨拶サイトに切り替えました。
サーバー負荷を抑えるため、サイトを年末年始の期間限定で公開し、軽量なSVGアニメーションを使って容量を抑えつつ動きのある表現を実現。
この取り組みによって、紙の年賀状と比較して CO₂排出量を約7割削減しています。

--三井住友カード株式会社--

環境配慮の明記 × データ削減でサステナブルなWeb体験を提供

社会課題を訴求するWebサイトに、サステナブルWebデザインの考え方を導入。読み込みデータ量の削減、表示時の消費電力が少ない色の採用、画像の軽量化など、環境に配慮した設計を徹底しています。

また、ページ内に「当サイトはサステナブルウェブデザインの考え方に基づいて作成されています」と明記している点も、企業としての姿勢がわかりやすく伝わり、非常に印象的です。

これら3つの事例から、サステナブルWebデザインが環境と企業価値の両面で効果を発揮することがおわかりいただけると思います。

導入が求められる企業とは?

サステナブルWebデザインは、海外の先進企業にならい、日本でも特定の業種で重要な経営テーマとして重視されつつあります。
私たちがWeb制作の現場で支援してきた経験からも、特に以下の業界ではその必要性が強まっていると実感しています。

アパレル・ファッション業界
消費者の環境意識が高く、企業の取り組みがブランドイメージの向上に直結するため、サステナブルWebデザインとの親和性が高い業界です。

製造業
製品の環境責任が問われるため、Webサイトを通じて企業の姿勢を示し、技術力や信頼性を伝える場として重要性が高まっています。

金融・保険業界
ESG投資が主流化したことから、Webサイトそのものをサステナブル化することが投資家への明確なメッセージとなり、企業の透明性を高めるうえでも大きな意味を持ちます。

IT・テクノロジー業界
デジタル社会を牽引する業界として、自社の環境負荷を率先して削減する社会的責任があり、リーダーシップや権威性を示す機会にもつながるため、積極的な実践が求められます。

こうした業界に共通しているのは、サステナブルWebデザインが環境配慮だけでなく、
企業価値の向上や、顧客・投資家からの信頼獲得にもつながるという点です。

効果検証のための測定ツール

サステナブルWebデザインに取り組む上で、効果の検証と“見える化”は欠かせません。
WebサイトのCO₂排出量は一見すると測定が難しいように思われますが、専門ツールを使えば手軽に可視化できます。
以下では、代表的なツールを2つご紹介します。

① Website Carbon Calculator

ホスティング環境やデータ転送量をもとに、WebページのCO₂排出量を算出できるツールです。
公式サイト:https://www.websitecarbon.com/

② Ecograder

サイトのパフォーマンス、エネルギー効率、アクセシビリティなどを多角的に診断し、改善点を提示してくれます。
公式サイト:https://ecograder.com/

これらのツールを活用することで、現在の状態を可視化し、目標に対する進捗を把握しながら、継続的にデジタル環境への負荷を減らす取り組みを進めることができます。

おわりに

サステナブルWebデザインをご検討中の企業様は、ぜひ当社にご相談ください!

このコラムでは、サステナブルWebデザインの考え方や具体的な取り組み、効果についてご紹介してきました。コラムだけではお伝えしきれないポイントや、具体的な設計の工夫はまだまだたくさんありますが、全体像やポイントはつかんでいただけたでしょうか?

マイクロウェーブクリエイティブでは、環境負荷の少ない設計や長期運用を前提としたデザインなど、
持続可能なWeb運用とビジネス成果の両立を見据えたサイトづくりをサポートしています。

「ユーザーにも環境にもやさしいサイトづくり」をテーマに、貴社に最適なWeb戦略のご提案を行いますので、
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