近年、企業や行政機関においてWebサイトが担う役割はますます広がり、高度化しています。
従来のCMSでは対応しきれない要件も増え、より堅牢で柔軟なサイト基盤が求められるようになりました。
そのようなニーズに応えるCMSとして注目されているのが、世界の政府機関や大学、大企業が採用している Drupal(ドゥルーパル)です。
このコラムでは、大規模サイトや複数部門が関わるWeb基盤の刷新をご検討されている担当者さま向けに、
Drupalの基本から他CMSとの違い、導入時の注意点、制作会社の選び方など、導入検討の際に押さえておきたいポイントを体系的に整理し、わかりやすく解説します。
目次
Drupalとは?
Drupal(ドゥルーパル/ドルーパル)は、PHPで構築されたオープンソースCMSです。
豊富なモジュールによる高い拡張性と堅牢なセキュリティを備えており、大企業、政府機関、報道機関、大学、NGO など、 さまざまな組織が運用する大規模サイトの基盤として導入されています。 複雑なシステム構築に対応できる点や、多言語化機能を標準で備えていることから、世界各国で広く採用が進み、国際的にも標準的なCMSの一つとして評価されています。
DrupalとWordPressの違い
WordPress や Joomla! と同じくDrupalもオープンソースのCMSですが、その立ち位置や得意とする領域は大きく異なります。 Drupalは、高度な拡張性や堅牢なセキュリティを強みに、エンタープライズ領域で採用されることが多いCMSです。
一方で、他のCMSと比べて開発・運用に一定の専門知識が必要となるため、初期の使いやすさという点ではWordPressほど手軽ではありません。
しかしその分、膨大なコンテンツを一元管理したり、複数部署が関わる大規模運営を効率化したりできる高い柔軟性を備えています。
セキュリティ面でも WordPress や Joomla! より堅牢な運用がしやすく、権限管理やアクセス制御を精緻に設定できるため、 行政機関や金融・医療など、厳格な基準が求められる領域でも広く採用されています。
また、商品管理・顧客管理・外部システムとの連携を柔軟にカスタマイズできることから、ECや会員制サービス、マーケティング基盤(DXP)としての拡張にも適しており、 複雑な要件をもつeコマースサイトでも大きな力を発揮します。
代表的な違いは下記の表にまとめましたので、CMS選定の参考としてご覧ください。
Drupalと他オープンソースCMSとの比較表

Drupalの主な特徴・機能
Drupalには、大規模サイトの構築・運用を支える、特徴的な機能が数多く備わっています。ここでは、代表的な特徴と機能を紹介します。
関連サービス:大規模サイト制作

①高い拡張性と柔軟性
- モジュール(プラグイン)を追加することで、必要な機能を自由に拡張可能
- コア機能に加えて、カスタム開発にも適した設計
- 大規模サイトや複雑な要件にも柔軟に対応
②強力なコンテンツ管理
- カスタムコンテンツタイプ、フィールド、ビューを自由に設計可能
- 膨大な情報を構造化して管理できる仕組みを標準で提供
- 複雑なワークフローや承認プロセスにも標準機能で対応
③多言語対応
- コア機能で100以上の言語に対応
- 翻訳管理や言語別URL設定が容易
④高セキュリティ設計
- 大規模なセキュリティチームによる定期的なアップデート
- 政府機関や金融機関で採用されるレベルの安全性
⑤ヘッドレスCMS対応
- バックエンドとフロントエンドを分離して利用できるヘッドレス構成に対応
- PCサイト、スマホアプリ、デジタルサイネージ、IoTなど複数デバイスへ一元管理で配信可能
- オムニチャネルでの情報発信基盤として利用可能
これらの特徴からも、Drupalは機密性が求められるシステムや、大量データ・多言語展開を行う企業に適したCMSだといえます。
導入実績が多い業界と企業例
Drupalが採用されている主な領域と、導入企業・団体の例をご紹介します。
官公庁・政府機関
高度なセキュリティ要件や多言語対応、アクセシビリティなどが必須となる行政サイトでの採用が多く、米国ホワイトハウス、マサチューセッツ州政府サイト、カナダ全政府機関のウェブサイトの約25%がDrupalを利用しています。
教育機関・大学
大学ポータルや研究機関サイトなど、多数の管理者が関与する大規模組織に適したCMSであり、高度なユーザー権限管理や承認ワークフローの要件にも対応します。国内の教育機関では、沖縄科学技術大学院大学(OIST)がDrupalを採用しています。
大企業・グローバル企業
多言語展開やブランド統制など、グローバル企業特有の要件に適しており、富士フイルム、三菱重工、三井化学、Teslaなど、多くの企業がDrupalを採用しています。
メディア・ニュースサイト
大量のコンテンツを高速かつ安定的に配信できることから、毎日新聞などのニュースサイトに導入されています。
旅行、航空、ECサイト
多言語・多通貨対応や複雑な予約処理などが必要なグローバルサービスで活用されH.I.S.、バニラエア、Lushといった企業に導入されています。
政府機関や、公共サービス領域での採用が広く進んでいることからも、Drupalがセキュリティや大規模運用といった重要機関に求められる要件を満たすCMSであることが分かります。
※導入企業名は公開されている情報を参考にしています。
状況の変化により、内容が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
Drupal導入に適したサイトの条件
Drupalは多機能で拡張性の高いCMSですが、すべてのサイトに最適というわけではありません。
運用や要件が複雑なサイトほど効果を発揮しますが、利用目的や規模によっては別のCMSが適しているケースもあります。
この項では、Drupalが向いているサイトの特徴と、反対にあまり適さないケースについて詳しく説明します。
Drupalが特におすすめのサイト・システム
大規模・複雑なサイト
数千ページ規模の大量コンテンツや、多層構造の情報を扱う大規模・複雑なサイトで特に力を発揮します。
部署やカテゴリが多い環境でも情報を整理しやすく、長期運用でコンテンツが増えていくケースにも対応できます。
例:官公庁、大学、グローバル企業のコーポレートサイト
多言語対応が必要なグローバルサイト
100以上の言語に対応できる機能をもち、言語別URLや翻訳管理などの仕組みを標準で備えているため、グローバル展開を求めたりローカライズを柔軟に管理したいサイトに適しています。
例:海外展開する企業サイト、観光・観光情報サイト
高度な権限管理やワークフローが必要なシステム
複数ロールの管理や、作成・レビュー・承認といったワークフローを前提とした運用体制に強く、大人数で関わるサイト運用に適しています。
例:イントラネット、ポータルサイト
セキュリティ要件が厳しいサイト
政府機関や金融機関で採用されるレベルの高いセキュリティ要件を備えており、個人情報や機密情報を扱う環境でも安心して運用できる堅牢性があります。
例:行政サービス、医療・金融機関のサービスサイト
ヘッドレスCMSやAPI連携が必要なプロジェクト
Webだけでなく、アプリやIoTなど複数チャネルへのコンテンツ配信を前提とした構成に対応し、外部システムとのAPI連携も柔軟に行えます。DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)基盤としての利用にも適しています。
例:アプリ連携型サービス、マルチデバイス前提のサービスサイト
向かないサイト・サービス
小規模・シンプルなサイト
数ページ程度の企業サイトや個人ブログなど、情報量が少ないサイトでは、Drupalの高度な機能を活用しきれず、オーバースペックになりやすい傾向があります。
予算や開発リソースが限られているプロジェクト
Drupalは構築や運用に専門的な知識が必要で、開発・保守コストが比較的高くなる傾向があります。
小規模チームや低予算プロジェクトでは、他CMSの方が適している場合があります。
デザインテーマを簡単に切り替えたい場合
WordPressのようにテーマが豊富に揃っていて、簡単に見た目を切り替えられるCMSとは異なり、Drupalはテンプレート主体の構築には向いていません。
頻繁な小規模更新のみのサイト
ニュース更新や数行の文言修正といった軽微な更新が中心で、複雑なコンテンツ管理機能を使わない場合は、他の軽量CMSのほうが運用・管理をしやすい場合があります。
Drupal導入費用・構築相場
Drupalはオープンソース型CMSのため、ライセンス費用は無料ですが、要件や規模に応じて構築コストや運用費が大きく変動します。
以下に、一般的な構築相場と費用を抑えるポイントを整理します。
基本費用(共通)
ライセンス費用:無料(オープンソースのため)
規模別の構築相場
主にDrupalの構築・カスタマイズを中心とした費用感の参考例をご紹介します。
デザイン制作やコンテンツ制作、インフラ費用は含まれない/別途となるケースがあります。
小規模サイト(10〜20ページ)
初期費用:100〜200万円(外注の場合)
運用保守費:月額10〜30万円
中規模サイト(30〜100ページ)
初期費用:200〜500万円(外注の場合)
(機能追加、デザインカスタマイズ、多言語対応などを含む)
運用保守費:月額20〜50万円 (監視・アップデート・サポート体制による)
大規模サイト(300ページ以上・複雑な要件)
初期費用:500〜1,000万円以上(要件定義・データ移行・独自開発含む)
運用保守費:月額30〜100万円以上(24時間監視、セキュリティ診断、インフラ維持を含む)
※「要件の複雑さ」や「権限・連携・運用設計」によって費用が大きく変わる点に注意が必要です。
Drupalの構築費用を抑える方法
「Drupalは高そう」というイメージを持たれがちですが、構築方法や運用体制を工夫することで、費用を抑えることができます。
✔ 要件をシンプルに整理する
不要な機能を盛り込みすぎず、「初期必須」と「将来追加」を切り分けることで、初期費用を大幅に削減できます。
✔ テンプレートや既存テーマを活用する
完全オリジナルデザインより、既存テーマをカスタマイズした方がコストを抑えやすく、構築期間の短縮にもつながります。
✔ 無料モジュールを活用する
Drupalには数千の無料モジュールがあり、SEO、キャッシュ、フォームなどは無料で実装可能です。有料モジュールや独自開発は最小限に留めることでコストを最適化できます。
✔ フェーズ分けして段階的に導入する
MVP(最小限の機能)でまず公開し、必要に応じて機能を追加する方式にすることで、初期費用を抑えつつ、運用しながら改善できます。
✔ 開発体制を工夫する
オフショアやフリーランスなど、Drupal経験者を外部活用することでコストを削減できます。ただし、品質担保のために実績のあるパートナー選定が重要です。
✔ 運用保守費の最適化
監視レベル(24時間/平日/営業時間内など)を要件に応じて調整することで保守費を抑えられます。また、軽微な更新は内製化することで運用コストを削減できます。
✔ クラウド・ホスティングの最適化
AWS・Azure・GCP などのクラウド環境を用いることでスケーラブルなインフラ構築が可能です。Drupal専用ホスティングサービスはセキュリティ更新などがパッケージ化されているため、運用負荷の軽減とコスト削減に効果的です。
✔ 長期運用コストを抑える工夫
モジュール選定時に保守性を重視し、廃止リスクの高いものは避けることが重要です。
また、CI/CD や自動アップデートを導入することで、人的作業を減らし運用コストを低減できます。
Drupal導入時の注意点・チェックポイント
Drupalは高機能なCMSですが、その特性を十分に活かすためには、技術要件や運用体制を事前にしっかり設計しておく必要があります。
ここでは、導入前に確認しておきたい注意点を「技術面」「運用面」「組織面」の3つに分けて整理します。
技術面のリスク
セキュリティ脆弱性
- モジュールやテーマの更新を怠ると攻撃対象になりやすい
- 権限設定の不備によって情報漏えいを招く可能性がある
モジュールの互換性問題
- Drupal本体(コア)のアップデートに伴い、カスタムモジュールが正常に動作しなくなるケースがある
パフォーマンス低下
- キャッシュ設定不足や画像最適化不備で表示速度の低下につながるリスクがある
複雑な構成による障害
- 多言語設定や複雑なワークフローを組む場合、テスト不足により不具合が発生する場合がある
運用面のリスク
アップデート対応の遅れ
- Drupalは定期的なセキュリティ更新が必須。対応が遅れると重大なリスクにつながる恐れがある
バックアップ不足
- バックアップ体制が不十分な場合、障害が起きた際に復旧できないケースがある
運用担当者のスキル不足
- Drupal特有の管理画面や構造を理解していないと更新ミスや設定不備が起きる
保守契約の不明確さ
- 障害対応範囲やSLA(対応時間)が曖昧だとトラブル時に混乱を招く
組織面のリスク
要件定義の不備
- 曖昧な要件や機能過剰のままプロジェクトが進むと、コスト増加や納期遅延が発生してしまう
体制不足
- 専任PMや保守担当がいない場合、運用が属人化し、引き継ぎやトラブル対応が難しくな
長期運用計画の欠如
- バージョンアップや機能追加を見越した計画がないと、将来的な改修コストが膨らむ可能性がある
リスクを抑えるための対策
これらのリスクに対する具体的な対策として、次のポイントが挙げられます。
- セキュリティ更新を定期実施(自動化や保守契約で担保)
- モジュール選定時にメンテナンス状況を確認
- テスト計画を導入前に策定(機能・負荷・セキュリティ)
- 運用マニュアル整備+権限管理ルール策定
- 保守契約の範囲・SLAを明確化
- 長期的なバージョンアップ計画を立てる
導入前に押さえておくべきチェックポイントは、
以下の資料でも詳しく掲載しています。ぜひDLしてお役立てください!
Drupal導入の失敗を防ぐためのチェックリスト
Drupal導入に必要な体制とは?
Drupalを活用するには、プロジェクトの規模に応じた適切なチーム体制を整えることも重要です。 小規模サイトであれば比較的少人数でも進められますが、ページ数や機能が増えるほど必要となる役割は広がり、専門性も求められます。
ここでは、規模ごとにどのような体制でプロジェクトを進めるのか、一般的な構成例としてチーム体制をご紹介します。
小規模サイト(10〜20ページ程度)
- PM(兼務):要件定義・進行管理
- Drupalエンジニア:構築・モジュール設定
- デザイナー:テーマカスタマイズ
- 運用担当(兼務):コンテンツ更新、軽微修正
- 保守(外注):セキュリティ更新、障害対応
中規模サイト(30〜100ページ程度)
- PM:要件定義・スケジュール管理
- Drupalエンジニア(複数):構築・カスタム開発
- フロントエンド:テーマ設計、レスポンシブ対応
- QA:機能テスト、負荷テスト
- 運用チーム:コンテンツ更新、SEO対応
- 保守チーム:アップデート、監視、障害対応
大規模サイト(300ページ以上・複雑な機能)
- PM:全体統括、要件・進行・品質管理
- 要件定義チーム:情報設計、UX設計
- Drupalエンジニア(バックエンド)
- フロントエンド
- デザイナー
- インフラ担当:クラウド、セキュリティ
- QAチーム:機能・負荷・セキュリティテスト
- 運用チーム:コンテンツ更新、SEO、マーケティング
- 保守チーム(24/365):監視、脆弱性対応、障害復旧
- データ分析・改善チーム:アクセス解析、UX改善
Drupalの制作会社選定の3つのポイント
Drupalは高度な技術、適切な運用体制、そして組織的な連携が求められるCMSです。
特に大規模サイトや複雑なワークフローを扱う場合は、導入から長期運用まで一貫して支えられる技術力と知見が不可欠です。
そのため、Drupalの特性や運用体制を理解し、適切な提案・実装・保守ができる制作会社を選ぶことが、プロジェクト成功の大きなポイントとなります。
以下では、Drupal導入を依頼する際に確認しておきたい制作会社選定のチェックポイントを整理します。
①Drupal実績の確認
・過去のDrupal導入事例を確認する(官公庁・大学・大企業などの実績があるか)
・rupal認定パートナー、コミュニティでの活動歴があるか
②技術力と対応範囲
- モジュール開発・独自カスタマイズの経験が豊富か
- ヘッドレスCMS構築や外部API連携の実績があるか
- セキュリティ対策に精通しているか(脆弱性診断、定期アップデート運用など)
⚠大規模サイトや複雑な要件で特に重要!
③運用・保守体制
- 保守契約の範囲が明確か(監視、障害対応、アップデートの範囲など)
- 対応時間が明確に定義された SLA が用意されているか
- 長期運用を見据えたバージョンアップ計画を提案できるか
⚠リリース後の安定性・継続的な改善に直結
これら3つのポイントをしっかり確認することで、制作会社選定の判断をより正確に行えるようになります。
制作会社選びに役立つチェックリストはホワイトペーパーでご紹介しています。
まとめ
ここまで、Drupalの基本や導入時に押さえたい要点を整理してきました。
Drupalは一般的なCMSと比べて専門的な対応が求められるため、依頼先となる制作会社の技術力や体制が成果を大きく左右します。
CMSの知識だけでなく、Webアーキテクチャやセキュリティ、組織運用まで理解した信頼性の高いパートナーを選ぶことが欠かせません。
Drupalサイトの構築やリニューアル、運用改善に関するご相談は、ぜひ当社へ!
私たちは、大規模コーポレートサイトから複雑なアプリケーション開発、ヘッドレス構成まで、Drupalに関する豊富な知見と実績を有しています。
要件定義から設計・構築、運用・保守まで一貫して支援できる体制を整えており、 長期的なサイト運用を見据えた最適なご提案が可能です。
Drupalの特性を活かしたサイト基盤の構築をご検討中の企業ご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください!
この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ バックエンドグループ
CMS、Webアプリケーション、開発・プログラミングに関する情報などエンジニア目線で深く切り込んだ情報を発信します。




