90年代後半のインターネット黎明期の企業Webサイト(コーポレートサイト)は、紙で作られた会社紹介の電子版のような扱いでしたが、インターネットの普及と共に現在は、ビジネス上でも重要なチャネルの一つとして存在感を見せています。しかし、Webサイトはあるものの、その有効運用に日々頭を抱えていたり、あるいはそのポテンシャルを十分認識できず放置したりしている企業も少なくないでしょう。そもそも、企業Webサイトの価値はどこにあるのか、また、その力を引き出すためにはどうしたらいいのでしょうか。
目次
企業Webサイトの役割とは?
企業のWebサイトには、ECサイトやリードの獲得に特化したサービスサイト、人材流通が目的のリクルートサイト、情報提供をするポータルサイト、会社の総合窓口として様々な機能をもつコーポレートサイトなど複数の種類があります。
これらを訪れる多くのユーザーは自身が抱えている何等かの課題を解決する事や、ニーズを満たすためにインターネットで情報を検索、閲覧しています。
企業側はそのニーズを読み取り、ユーザーごとの目的を整理してそれぞれに的確なコンテンツを提供したり、競合と比べる時の優位性や有益性・信頼性のある情報をサイト上で表現することが重要なポイントとなります。
企業が持つサイトには様々なニーズをもったユーザーがアクセスしますが、必要な内容を適切な導線で提供できれば、評価・親近感が上がり、ブランディング効果が期待できます。またサイトを訪れたタイミングでは興味がある程度の認知を、購買やサービス導入、採用活動など様々なポイントで想起してもらうための「エンゲージメント」向上にも貢献できるといえます。
これらの事から、企業Webサイトの役割は、顧客・見込客、協業者、株主・投資家、求職者、マスコミ関係者、自社社員等、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーに対して、的確な情報発信またはコミュニケーションを行うことで、来訪者と信頼関係を築き、継続的な接点を持ち続ける重要な「コミュニケーションツール」であると私たちは考えております。
企業Webサイトの課題とWeb施策の考え方
企業Webサイトの担当者が抱いている悩みは、
- サイトが古い
- 使いづらい
- 企業イメージが反映されていない
- 経営体勢や方向性に変更があり、サイトと現状にズレがある
- 機能が足りない
- 更新に時間と予算がかかり過ぎる
- 上層部が今のサイトを気に入らない
等々、本当に様々です。
また、Webサイトの重要性は広く認められた今でも、企業によってWebサイトに対する取り組む姿勢と重視度もまちまちです。
Webサイト上で大きな実益を見込めない業種においては、どうしても企業Webサイトが存在する意味が曖昧になり、Web戦略も立てにくいところがあります。
しかし前述のように、企業Webサイトにマスコミ関係者や求職者、自社社員など多くのユーザーがアクセスしています。サイトが古い、情報が整理されていない、操作しにくいなど、Webサイトの良くない状態は収益機会の損失やブランドイメージの低下を招く恐れが考えられます。
企業Webサイトは会社の「目指すべき姿」を全社員に共有するための手段でもあります。今までの努力をすべてのステークホルダーに伝えて共感してもらい、将来への展望と決意を見せて賛同と協力をもらうところにも意味があります。
企業Webサイトの課題は担当部門だけの課題ではなく、横断的に複数の部門を巻き込んで全社視点から考えなければいけません。
つまり、Web戦略というのは、会社としての企業戦略で達成したい目標を明確にした上で、それを実現するためにWebサイト上では何が出来るかを策定するべきもの、と捉えることが重要になります。
企業Webサイト有効性のチェックポイント
今までの内容を踏まえ、自社の企業Webサイトの現状を把握するために、以下の8つの角度から評価してみてはいかがでしょうか。
1.リアルな企業活動と連携していますか?
自社の営業活動、マーケティング活動、商材、ターゲット等、企業活動全体を捉えた上で、Webの役割を明確にし、必要なコンテンツ、機能を搭載する必要があります。
2.Web特有の表現をしていますか?
鮮やかなデザイン、動画、音声、インタラクティブなインターフェイス、コミュニケーション機会等、ユーザーは豊かなWeb体験を求めています。
紙のパンフレットのコピーではなく、Webならではの技術を活かした表現をすることでユーザーの満足度をさらに高めることができるかもしれません。
3.ターゲットに合わせて設計していますか?
株主、投資家、求職者、顧客など、一企業にかかわるステークホルダーは多岐にわたります。コミュニケートする相手に合わせたコンテンツと、機能的な導線の設計が重要です。
4.企業のイメージがデザインに反映されていますか?
ユーザーはサイトのデザインや細かな機能からも企業に対するブランドイメージを抱きます。コーポレートカラー、ロゴや細かなパーツのデザイン、文章の表現に至るまで詳細な表現方法を設計することが重要です。
5.目的・目標が設定されていますか?
何がどのような状態になっていれば、サイトは健全な状態なのか、具体的な指標値(KPI)と、指標を満たす為の取り組み課題(アクションプラン)が明確でなければなりません。
6.迅速・経済的に更新できていますか?
企業Webサイトは自社メディアの基盤です。
迅速な情報更新が求められています。頻度の高い更新を最適なコストで管理することが重要です。
7.ガバナンス(統制)ができていますか?
複数のサイトを管理している場合や、複数の担当者でサイトを管理している場合、サイトが不揃いにならないようHTMLの記述、文章のニュアンス、更新作業等を運用できる仕組みを導入する必要があります。
8.グローバル対応をしていますか?
グローバル化が進む昨今、企業Webサイトのオーディエンスは国内企業ばかりとは限りません。市場拡大や海外進出など会社としての更なる成長には企業Webサイトの多言語化は必要不可欠です。
9.サステナブルへの取り組みを発信していますか?
近年企業には必須となるコンテンツです。
自社の事業内容に応じた環境活動や地域社会への貢献など、社会的な取り組みを取引先・顧客・株主(投資家)・求職者などをステークホルダーに発信することであらゆる業界においてビジネスを拡大するメリットが生まれます。
サイトリニューアルは必要?不必要?
上記のチェックポイントと対照していかがでしたでしょうか。1つでも「いいえ」が出たら、現状サイトに改善する余地が考えられるかもしれません。しかし、全ての課題においてリニューアルが必ずしも最善の解決方法とは言い切れません。状況によって一部コンテンツの配置を変えたり、表記方法を変更したりするといったUX(ユーザエクスペリエンス)を検証するためのテストを継続的に行い、そのフィードバックにより部分的な改善をし続けることが効果的である場合もあります。また、迅速な対応を要する場合は時間のかかるフルリニューアルは明らかに現実的な施策ではありません。
それでは、サイトのフルリニューアルをする必要はないように聞こえるかもしれませんが、もちろん必要な場合もあります。
部分的改善と変更の積み重ねによってサイト全体の統一性がなくなったり、ソースコードに矛盾が蓄積されエラーが発生しやすくなったり、管理コストとリスクが高くなったりする問題も発生しかねます。また、一時的に修復したかのように見えたとしても、根本的な設計上の課題を解決しないと完全なる問題解決にはなりません。つまり、リニューアルをしなければいけない時はいずれ訪れると言えます。
ここで大事なのは、「正しいタイミング」で「正しいリニューアル」をすることです。
正しいタイミングとは
サイトのデザインが古い、気に入らない等のようなビジュアル的で主観的な理由ではなく、サイト自体が大きな構造の変更なしに、企業戦略の目標達成に貢献できにくくなったらリニューアルする時期です。
また企業イメージを刷新したい時や会社の方向性変更があった時、更に新規事業を立ち上げるなどの際に、ウェブデザインや構造を再設計するフルリニューアルはとても効果的です。
サイトのリニューアルは今まで山積みしてきた機能性上、運営上の問題点を整理しまとめて解消する機会でもあります。管理時やメンテナンス時にストレスを感じたり、サイト開設時の活気や広告効果がなくなってきたり、ユーザーの利用習慣やニーズが変わったりする場面があり、現状のサイトであらゆるところに不便や不足を感じたら、リニューアルが必要な時期になったとも言えます。
最初は少数ページの小規模サイトとして始め、長く運営しているうちに新しいコンテンツがどんどん追加され、かなりのページ数と情報量になり、新旧コンテンツが混在した状態になった場合など、管理が大変になります。整理するには時間と手間をかかりすぎて手に負えない状態になりましたら、Web運営のガイドラインを構築し、CMSの導入を始めとするWebガバナンスを確立することをお勧めします。
正しいリニューアルとは
リニューアルの目的は現状サイトにある課題を解決するためです。その目的を達成するため、まず解決すべき課題を明らかにする必要があります。Webサイトの担当者にヒアリングして直接課題を洗い出す方法もよいですが、ログ解析などの分析を通じて客観的に現状把握と原因究明を行うことはとても大事であり、リニューアルの失敗を防ぐ必須のプロセスになります。
また、企業Webサイトに明確な目的や具体的な目標数値(KPI)を設定していないという声を多く耳にしてきましたが、私たちは目標を設計することで成果を可視化にする事を提唱しています。ただし、よく目標とされがちという「PV」や「アクセス数」には要注意です。これらの数値が確かリニューアル後に上がったとしても、「来てほしい人に来てもらう」「アプローチしたい人にリーチできる」「コンバージョン率(お問い合わせ数や資料請求数など)を上げる」といった効果がなければリニューアル成功したとは言えないでしょう。
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「サイトをリニューアルした」は終わりではない
リニューアルが完了しても、まだまだ終わりではありません。常に最善の状態を保つための日常的メンテナンスや更新作業、PDCAによる定期的な改善、アクセス解析等を通じてリニューアル前の状態と比較し目標達成の具合をチェックする等、継続的・長期的視点で考えなければいけません。上記内容を踏まえ、自社の企業Webサイトを今一度見直ししてみてはいかがでしょうか。
この記事の著者
マイクロウェーブクリエイティブ プロデュースグループ
クライアントのビジネス課題を解決するための提案経験を活かし、サイト制作に関する多岐にわたる情報を提供します。